shilog

ログです。

今日も布団の上で目が覚めた。ふだんから布団の上で目を覚ますように気を付けてはいるのだが時々布団の横で目を覚ましたりする。布団の横で目を覚ますと何となく体の節々が痛むので出来るだけ布団の上で目を覚ましたいのだが如何せん寝ている間のことゆえ。
カーテンの隙間から頭の上に青い光が注いでいる。まだ眩しさを押さえたその光は今が朝だと告げている。夕方かもしれないって?そんなことはないだろう普通朝起きたら朝だよ。
上半身をぐにゃとひねり左手で目覚まし時計右手でメガネの方に手を伸ばす。目覚ましらしき硬さは発見。7時10分。やれやれとばかりにまるで脳味噌が入っているかのような頭をもたげ1,2振り。視界はぼやけている。視力は両眼0.03。だいたい。視力もここまで悪くなればある種障害と言えはしまいか。以前厚生省エリートの友人からなにがしかの補助金を貰えないかと頼んでみた事が無いがそんな物は貰えないらしい。そんな友人もいないのでしかたあるまい。生活における肉体由来の不自由をすべて障害とするならば障害を持たない人間などいないという事になるため保健制度そんなことはいいんだよ何か足りないと思ったらメガネ持ってねえんだ。

メガネが見当たらない。
珍しくは無いがあまりぶち当らないシチュエーションである。大御所の漫才かいじめられっ子のプール授業の後か酔って目覚めた朝か。答えはニアリー3。

細かく話をしよう。
一度夜中に起きているのだ。たしか3時ごろ。なにやら「死になさい」とかそんなキャッチコピーのゲームをしばし遊んだ後データを消失させてもうやる気もなくなって生きる気力も失って腹も減ってそれで朝食用の食パンを切らしていたのでおにぎりでも食うかとコンビニへ行ったのだった。

コンビニはおにぎりだった。

家に帰りおにぎりを食べると僕は起きてるのかねてるのか判然としない状態になった。よくあるのだ。朝早く起き過ぎて仕方なく朝食を朝食べるもなんか急に眠くなって食べかけで歯形のついた食パンを左手に持ったまま寝てしまい起きた時はそれに気付かず夜家に帰って硬くなったパンを見て。
というのが。

今日もそれをした。起きると体をねじって左手で時計右手でメガネをつかもうとしたらそしたらメガネが無かったのだ。寝ぼけているうちにどこかにメガネを置いたのか。しかしどこかわからない場所へメガネを置こうなんて意思は僕にはなかった。ということはメガネがかってにどこかへ行ったという事になるよね。でも。でも。なんて喪失感。まるでメガネの一部を失ったような。全部です。

例えばこういうとき「メガネなんかなくたって大丈夫生きていけるよ」
「あなたの魅力はメガネだけじゃないから無くなっても心配しないで」などと声をかけてくれる人がいれば自分はどんなに励まされないだろう。励まされないなあ。
今メガネが無いのはなんらかの泉に落ちたからかもしれない。もしメガネをうっかり泉に落としてしまいすると水の中から女神が現れて「あなたの落したのはこのきれいなジャイアンですか?それともパンを踏んだ娘ですか?」と問われたとしたら?それはメガネが化けたのですかそれともあなたが持っていたのですか。「穴があいているという事は物を落とす人が現れるという事なんです」衛星軌道にドーナツを置くとスペースデブリが回収しやすくなる理屈ですね。人が丸ごとすいよせられて落ちてきたりしませんか「ジャイアンなど」なるほど。でも僕は確かメガネを落としたんです。小さくて丸い、きれいな宝石なんです。それを指輪にして結婚を申し込むのです。泉の女神様、結婚してください。「そんな。私とあなたはまだ出会ったばかりではありませんか。それともあなたも最近の軽佻浮薄な若者と同じように、出会う前にセックスをして出会った頃には出産、離婚、子育ても始まる頃には二人とも冷たい土の中。それをある夫婦が養子として育てている。もちろん子供には秘密にして。それがあなたなのですよ。」つまりなんなんですか。わたしが養子だから?それとも眼鏡が無いから?めがねが無ければケーキを食べればいいの?てんではなしにならないや。さよなら!


思わぬ所で出生の秘密を聞いてしまった。養子ぐらい今では珍しいことでもなんでもないので何も思わない。でも今日はこれ以上秘密を聞きたくない。秘密を一つ聞くと脳の5%が秘密を外部に漏らさないように秘密保持ルーチンを構築するので能力が減ってしまうのだ。現代社会は能力社会。能力のない者は能なしと呼ばれて青果市場。見てごらんよ秘密をかかえすぎてしまってひみつぼくじょうを始めてしまった青原さんを。だいなしじゃないか。秘密は売り物にならないから自分の踊りをみせるしかないんだ。踊りなんてやったこと無いのに。


結果的に僕はメガネもないし踊りもできない軽佻浮薄な若者でしかないんだ。ケーキを食べよう。ケーキを食べても視力は変わらなかった。1年前から使っていない1dayAcuvueを目に装填し、朝の光の中へ。


夜の光の中戻ってきたがメガネはみつからない。あれえ。